⻑さ60センチの⾓材に80キロ程度の粘⼟を巻き付けて、ワイヤーで吊るす。その状態で⼤筋の原型を制作する。
原型を横付けにして、アルミ⽚で⽯膏型の⼟⼿を作り、さらに粘⼟板で幾つかに分けて⽯膏型を作る。
⾓材で櫓を作り、原型の重みで⽯膏型の破損するのを防ぐために、⽯膏を⾓材で補強しておく。
(櫓は型が半⾯仕上がった状態で解体する)
反対側も同様の仕⽅で⽯膏型を制作する。
⽚側の⽯膏型を外した状態。添付画像は細かい部分の原型の型取り。
完全に原型を取り除いた状態。型のつなぎ⽬の凹凸をなくして綺麗に仕上げるために、その部分に油粘⼟を擦り付ける。
ガラスクロスとFRP樹脂で何度か重ね塗りを⾏う。添付画像はタルクと樹脂液を撹拌。この時少量の硬化剤を混ぜるが、気温によってその分量を調整する。 調整している様⼦と、ガラスクロスと樹脂が固まった状態。
⽚⾯ずつの樹脂型を⽯膏型から割って取り出し、張り合わせた状態。
作品台に取り付け、同様の技法で制作した付属を樹脂で貼り合わせる。グラインダーや鋸やすり、サンドペーパーなどで、つなぎ⽬や作品の表⾯を滑らかに仕上げる。
樹脂の表⾯を処理したのち、澱をさげた胡粉液を何度も塗布する。徐々に薄めた胡粉の塗布を重ねる。乳⽩⾊の柔らかな光沢のある艶がでてきた状態になったら、必要な所に薄膠液で⾦箔を貼って完成。
題材についての書籍、資料等を徹底的に調べたり、時には何年もかけて想像を巡らせ、イメージを形にする。
地元産の上質な粘⼟を、寝かし等を経て、丹念に練り上げる。
粘⼟で⼈形の細部までを造形する⼤切な作業。完成後は型取りに合わせ切り分ける。⼩さい⼈形では複数に分けないものもある。
分割した原型のパーツごとに、周りを板状の粘⼟で囲い、⽯膏を流し込んで型を取り乾燥させる。
よく練った粘⼟を、原型から取った⽯膏型に貼り付けるような感じで、厚みを均等にする感覚を感じながら押し込んでいく。
型から取り出した⽣地を乾燥させた後、ガス窯や電気釜で8時間ほどかけて素焼きし、窯の中で冷ましてから取り出す。
素焼きした⼈形に、⽇本画の絵の具で肌の部分、着物の模様や帯、髪の⽑の細かい部分など、直接⼿作業で描き込んでいく。
最後に、「⼝紅⼊れ」「⽬⼊れ」「まゆ⽑かき」 など、⾯相筆を使って顔の部分を描き込み、博多⼈形の命ともいえる表情を作り上げる。
これは私個⼈の考えであることを最初にお断りして述べさせてもらいますが、博多⼈形が他の⼈形と
違うところは、型ものであるということと、やはり精巧な造形の伝統だと思います。
この造形の伝統を⽣かし、陶芸の技法を応⽤する事で、新しい持ち味の⼈形ができるのではないかと
思い、三国志などの作品に使い始めました。
『ねむり菩薩』胡彩陶彫⼈形
釉薬部分仕上げ ⾼さ5.5cm
よく寝込んだ幼児の、愛らしい感じを作ってみようと思いました。
陶⼟を使い⼀品作のやり⽅で⼈形を作り、彩⾊する感覚で⼀部釉薬を施して本焼きで仕上げます。おもに肌部分は焼きしめで仕上げていますので、胡粉彩⾊を施すことができます。
重厚な質感の釉薬部分にはさらに、⾦液を焼き付けすることで、⽇本画材の⾦泥では得られない、ずっしりとした⾦属管が表現できるのです。
博多⼈形の繊細さと陶芸の質感はまさに、中国の英雄像にはふさわしい表現ではないかと思い、説明しやすいように、この技法を「胡彩陶彫⼈形」と名付けました。
※胡粉(ごふん)︓⽇本画で⽤いる⽩⾊顔料 イタボ牡蠣、ハマグリなどの⾙殻が原料⾦泥(こんでい)︓フレーク状の⾦箔を膠(にかわ)で溶いて練り潰した顔料
『酒仙』胡彩陶彫⼈形
釉薬部分仕上げ ⾼さ10.5cm
はじめて師から人形の顔を認めてもらった作品です。